「教えてもらう」から「学ぶ」へ

投稿日 : 2014年05月19日, カテゴリー : 塾長のBLOG

授業を受けている子供たちの中には二通りのタイプがいる。教えてもらっている子と学んでいる子である。外形からは分かりにくいが、習得の時間と深さに大きい差が生じる。

日本の教育は先生が教え、生徒は教えてもらうという形と考え方で進められてきた。今でもその本質は変わっていないと思う。明治以来の富国強兵策の一環としての人づくりは、まず西欧に追い付け追い越せを目標に、ひたすら知識を詰め込む教育を行ってきたが、そういう教育システムにはぴったりの形である。先生は黒板と向き合って一生懸命板書をし、生徒は授業中いっぱいその板書をノートに写して、そのノート化した知識を家で覚えてくることが勉強と呼ばれていた。そこでは結果や結論が重視され、そこへ至る過程は比較的軽視されていた。ここでの勉強は先生が伝授してくれた考え方や知識をトレースし、正確に再現できることが重要で、なぜそうなるのかという疑問を投げかける余地は少なく、たとえそういう疑問を先生に投げかけても「そうなっているからとにかく覚えなさい」と返される。ここでは先生が教えてくれた事柄を理解し、覚えることが勉強のすべてで、思考や思索は必要とされない。

他方、学ぶとは教えてもらった事柄を理解し覚えるだけではなく、なぜそうなるのかを思考し思索する過程で自分の言葉とイメージに変換し、ストーリー化することである。なぜなら、学ぶ目的は自分でそれを使えるようにすることにあり、そのためには自分の頭で考え、自分の語彙の範囲で表現できなければならないからである。そして自分の言葉で考えているので知識と知識のネットワークとその知識が出てくる原理原則が習得されている可能性が高く、応用的な問題にも十分対応できる。

ただ、「教える-教えられる」と「教える-学ぶ」とどちらが良いかという二者択一の考え方はとることはできない。小学生の低学年や勉強の仕方そのものができていない生徒にとっては、最初から「学ぶ」を要求しても無理な話で、それを強要すれば勉強嫌いになる恐れだってあるし、また、分野によっては結果や知識重視の勉強が先行することだってあるからだ。たとえば、アルファベット、英単語、漢字、計算などである。

しかし、一般的な中学生や高校生にとってはぜひ「教える-学ぶ」という形を意識して勉強に取り組んでほしいと思う。理由としては次の三つである。一つは自分の頭を使い自分の言葉を使う勉強なので定着しやすく勉強がおもしろくなる。二つ目は知識のネットワークと原理原則が出来上がるので応用力が付き、成績も上がりやる気が出てくる。三つ目は答えが用意されていない現代の社会に出たときに本領が発揮され、いわゆる飯が食える人物になる。

しかも、学ぶ姿勢は何も学校の勉強だけに限られることではなく、その態度をとることによって将来、仕事や日常生活にも強力な「武器」になり、結果として経済的にも心理的にも安定した生活ができる可能性を大いに秘めているものと思われる。

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