「ホンモノ」を感じる
投稿日 : 2014年01月16日, カテゴリー : 塾長のBLOG
過日フランスを訪れた折に、ルーブル美術館とオルセー美術館に入りました。まず、その規模の大きさに驚き、次に展示作品の多さに驚かされました。ルーブル美術館に至っては約3万5千もの世界の有名作品を陳列しており、とても数時間で回れる代物ではありません。入館する前は観光気分で語り草にでもなればと思い、知っている有名な作品を一通り見て回ろうと考えていました。しかし、レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」やゴッホやミレーの作品を目の前にすると目が釘付けになり、足が動かなくなりました。もちろん、それらの絵は写真では見慣れたものであり、「あ、それね、ダビンチのモナリザでしょう。知っているよ」。私の知識の中では終わっていた作品でした。ところがです。ホンモノを目の当たりにすると今までの自分の知識がガラガラと崩れて行くのが分かりました。結局、今までは人が写した写真と人が書いた解説を知識としてストックしていたにすぎなかったのです。今は自分の目で見、自分の感覚を通した「モナリザ」が従来の知識に置き換わっています。特に色使いの深さが「モナリザ」の優しい微笑みを醸し出していることを自分なりに感じ感動しています。
衣食住が満たされた後、人間が生きることに見出す意味は心の豊かさの追求だと私は考えています。そしてそれは人間の本能に近いもので、「心欲」と呼んでいいのではと考えています。食欲や睡眠欲や性欲などが肉体に基づくもので、「心欲」は精神や心に基づくものです。そしてこの「心欲」が満たされると心が豊かになります。その結果、気持ちが落ち着き、他人に対する共感意識が磨かれ、人間としての品格が出てくると考えています。このような考え方は私独自のものかもしれませんが、私の人生体験から出てきたものです。
この「心欲」を満たすものは人間の五感、つまり視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を通して入ってくる「何か」だと思っています。その「何か」ははっきりわかりませんが、少なくとも「共感するもの」「感動するもの」であることは間違いありません。そして「ホンモノ」とはそれが大多数の人によって証明されているものです。もちろん、証明されるには長い時間がかかるので、証明されていないからといって「本物」ではないということにはなりません。ですから、身近に「本物」はゴロゴロあるでしょうが、しかし、その何倍もの「ニセモノ」があることも事実です。そして「ニセモノ」にばかり触れていると「本物」が分からなくなります。だから、最初のうちは世に定評のある「ホンモノ」を感じる訓練から入ることが必要です。
「ホンモノ」を感じるためには時間とお金が必要です。そして、最初はそれに時間とお金をかける必要性に疑問を感じることでしょう。なぜなら、衣食住が満たされていない場合、「ホンモノ」に時間とお金をかけるよりも、すぐに結果の出る「物欲」を優先しがちだからです。しかし、絵画、彫刻、書、音楽、詩歌などの分野で「ホンモノ」を感じ続けるとそのうちに心が豊かになる感覚を身につけることが出来ます。これからの人生が豊かになるためにもぜひ「ホンモノ」を感じませんか。