聞き手がいない
投稿日 : 2010年09月03日, カテゴリー : 塾長のBLOG
人と人とが話をする時、話し手と聞き手が生まれます。そして、時には話し手になり、時には聞き手になって、話が弾んでいきます。親しい友や好きな人同士の会話は実に楽しく、時間がたつことも忘れてしまう経験は誰しもあるでしょう。
しかし、多くの会話や対話には話し手ばかりで聞き手の存在が非常に少ないと感じています。相手が話しているときは、一応聞いているふりはしますが、本当は次に話すことを考えており、相手の話が途切れた時を見計らって、話し始めます。ひどい場合は、相手が話しているのに、その話をさえぎって自分の話を通そうとします。学校でも、会社でも、何かの集会でも、話し手ばかりで聞き手が極端に少ないのが現状です。巷間でも、話し方に関する本はたくさん出ていますが、聞き方に関する本はほとんどありません。なぜなら売れないからです。つまり、世間では話し手が主役で、聞き手はわき役だと思われているからです。
しかし、話が本当にうまいとは、話の仕方が上手というのではなくて、相手や聴衆をよい聞き手に変える力を持っている人のことをいいます。たとえば、結婚式のスピーチはほとんどの場合退屈ですが、たまに胸に迫る話し方をする人がいます。よく観察すると、その間、その場の雰囲気が変わっていることに気づきます。聞き手である我々が、話し手の話の中に吸い込まれて、その中で各々が自分の物語を創り、酔いしれているのです。
よい聞き手がいると話し手は安心し、話が弾み、その能力を十分に発揮します。つまり、聞き手が話し手の能力を引き出すという点で、聞き手が主役なのです。
それでは、いい聞き手になるにはどうしたらいいのでしょうか。相手のことが大好きで、何でも知りたいと思っていれば、自然といい聞き手になることは経験されているでしょう。そこにヒントがあります。つまり、相手に興味を持ち、その話を聞きたいと思うことです。そうすると、相手の言葉を単に聞くのではなくて、感じようとします。感じるためには相手の表情や声音から、言葉の向こう側に広がる世界を取りに行くので、自然と相手と一体になり、同じ物語の登場人物として、その物語を深め発展させていくことになります。そこに共感意識が芽生え、話し手聞き手の人間関係のきずなも同時に創って行くことになるのです。
友人関係や親子関係などの人間関係を素晴らしいものにしたかったら、いい聞き手になることです。友達や子供の話すことを、心をこめて聞いてみましょう!きっと、自分が主役であることが実感でき、自分が相手にとっていなくてはならない存在になり、思いがけない感動が生まれることでしょう。